チャットツール Remotty と過ごした 1 年間。Remotty は自分にとってどういう存在であったか。

限界集落で 2 年間リモートワークをしていたプログラマが 4 ヶ月間東京で働いてみて感じたこと - dunno logs

上記の記事を書いてから 1 年ぐらい経ちますが、Remotty を使い始めて 1 年と少し経つので振り返りを書いておきます。

www.remotty.net

Remotty とは何の関係もありませんが、ベータの機能を使わせていただいたりもしましたし、単なるツール以上の好意があるので、ステマっぽい記事になるかもしれない。。

現在の私とチームと Remotty の位置付け

私は 10 人ぐらいの開発チームの 1 メンバーとして働いていますが、その中で唯一東京の本社には出社せず、地方拠点で働いています。タイムゾーンは当然同じですし、普通に地方拠点に出勤しているので勤務時間も東京本社と全く変わりません。

一方で Remotty には、私のチーム以外にも、同じ部門のインフラや R&D チームのメンバーも一部参加しており、逆に私のチーム内でも参加していない人もいるので、だいたい平均して 10 数名ぐらいがログインしているという状況です。(一人例外で社内のコーチが入っています、が特にコーチングのためとかではなく、以前同じ部門で働いていたころの名残。)

また、R&D チームは半数が地方拠点勤務のため、私自身のチームとしては一人だけのリモートメンバーですが、Remotty 参加メンバーで見ると1, 2 割ぐらいはリモートメンバーということになります。(加えて、最近は週一ぐらいで在宅勤務する人もいるので、そういう日はリモート割合が増える。)

チャットツールに全員参加してなくていいの?

社内では全社的には Workplace by Facebook が中心に据えられており、それにプラスして各部門やチームがコミュニケーションツールを使い分けるという状況です。

開発系の部門は Slack を使っていますが、それも結果全部門が Slack になっただけであり部門毎に個別の organization で運用しており、そこに交流はありません 😢(部門ごとで経費計上とかしてるので、勝手に他部門に有料のアカウントなんか作れない。けど、代わりに誰でも入れる無料版の Slack の organization があって、そこで交流してます。)

もちろん私も部門やチームも Slack です。

Slack と Remotty を併用してるってこと?

とういことになります。

  • Slack
    • マネージャーや企画チームメンバーなどなど部門の多くの人が参加
    • Github や Qiita などの更新、日々の運用に関する多種多様な通知が流れてくる
    • アラートやエラーログの通知なども流れてくるため、基本的に会話よりも圧倒的に通知の量が多い
  • Remotty
    • リーダー級は入っているが、マネージャーはいない
    • なんとなく開発系の人を招待してる
    • 通知は一切流していない。会話のみ。

チャットツールの併用は何かすごいムダ感があるように感じられそうですが、実際やっている身としては全く役割の違うツールという使い方なのでそんなに気にならないです。

自分にとって Remotty は何であったか?

なんというか、「 良くも悪くもオフィスの空気感を醸成するもの」だったなと思います。

先日、ふと思い立って 2 日程 Remotty を立ち上げずに仕事をしてみたのですが、「とても集中できる時間が長かったな」と思う反面、いいようの無い寂しさというか、物足りなさを感じました。「あれ、俺何してるんだっけ」と足元がふらつくような大げさに言うとそんな感じ。

もちろん、アラート等は Slack に来ますし、業務的な質問も Slack で飛び交っているのでなんらか本社での活動があることは Slack を通して分かるは分かります。

別に Remotty にログインしていても、雑談を一日中してるわけではなく、一日雑談をしない日だってあるし、忙しい時はぼそぼそと呟くことを忘れてしまうこともあります。なので、「コミュニケーションを取りたい!」とかそういう欲求ではないのだろうなと。

欲しかったのは空気感

Remotty の紹介ページにイメージも載ってますが、Remotty にはタイムライン領域が最初から用意されています。Slack でも「分報・times」みたいな個々人のチャンネルを一つのチャンネルにまとめて流すようなことをするケースがあると思いますが、Remotty は最初から自分の分報(パーソナル)エリアと、それらをまとめたタイムラインの機能のみが前面に出てきます。

このタイムラインが前面に出てるというのがすごく大事で、Remotty を開いた時に「ふっと」目に入るというのが重要です。(Slack で専用のチャンネルを開くのとは異なるという意味)

紹介ページの言葉をそのまま借りると「みんなの会話が見える!オフィスの雰囲気が伝わってくる」なわけですよね。

オフィスの雰囲気?

これは利用用途にもよると思うんですが、私の場合はオフィスの雰囲気という表現では半分ぐらいだなという気がしています。

Slack の分報とかでも同じだと思いますが、結構チャットになると「独り言」や「考え事・悩み事」をドバドバ書く人がいたりします。一方で、普通はそういうことを言ったり書いたりしない人もいて、そういう人は Remotty にログインしていても静かにしてる(でもそういう人が、ふっと書き込む事は大事だったりする)。

そういうなんか「オフィスに居る以上に感じられること」みたいのがあるなと。なんだろ、無口っぽい人がチャットだとたくさん発言するのも面白いけど、無口な人が、チャットでもそのまま無口っていうのも、なんかそれはそれでありだなって思うんですよ。でも、ちゃんとログインはしてくれてて、話しかけると返してくれる。実際、うちの Remotty 運用は完全に参加任意なので、ログインしなくても全然困らないのに、ちゃんと入ってくれている。なんかそういうのが地味に嬉しいんですよね。

雑な雑談所

加えて、たぶんマネージャーが参加してなかったり、一部雑談好きなメンバーなんかがいることで、「会社裏の喫煙所」みたいなちょっと下世話な雰囲気が漂うことがあるのも面白かったりします。私は喫煙者ではないので、喫煙所の状況とか知らないのですが、何か面白い話しがあるのって喫煙所か飲み会だったりするじゃないですか。(これも会社の文化によると思いますが)

当然地方拠点にいると飲み会なんてめったに一緒にはいけないので、そういうちょっとだけ愚痴っぽい話しやホントどうでもいい噂話(結婚するらしいよとか)を聞けるのって、実はすごい嬉しい。

で何であったか?

37signals の本とかでも、リモートの寂しさみたいのは逃れられなくて、ローカルのコミュニティや家族との時間を大事にしようみたいな事が書かれていたような気がします。それはすごいその通りだと思う一方で、「その寂しさは本当に我慢しなければいけないことなのかな?」と疑問を呈してみたくもなります。

もちろん、人が感じる寂しさはそれぞれだと思うので、それがチャットツール一つで解決できるとは思いませんし、たぶん私の Remotty グループに所属するメンバーが偶然そういう場を作ってくれただけだとは思いますが、なんらか「チームの人がそこにいるな」という感覚をもたらしてくれる存在であったなと思います。

「リモートは辛い・厳しい」みたいな話しもあるとは思います。「成果でしか評価されないから逆に厳しい」「情報は自分から取りに行かないとやっていけない」etc 、、確かにそういう側面があることは否定しませんが、それもある意味組織の問題が露呈しているだけだと思います。
どうして社内に居るとそうではなくて、リモートになるとそうなるのか。何かおかしいですよね。評価にしろ、情報共有にしろ、日々のチームビルディングにしろ、きっと何か足りない部分があるからリモートメンバーががんばらないといけない事になってしまう。
けど、Remotty がくれる雰囲気を感じていると「決してリモートが特殊という訳ではない」というのを思わずにはいられません。が、これはたぶん SonicGarden さんの記事とかの影響ですね、はい。

もちろん弊害もある

これは、オフィスに居ても同じですが、やはり聞きたくないような話しも飛び込んできてしまうことはあります。それでモヤモヤしたり、悩んだりというのもありますが、まあ、そういう時はタブを閉じればいいので、良いのではないでしょうか。

同僚がタブを閉じるまでやらなくても、「この人のルームでの会話を一時的に遠ざける」みたいな機能があるといいと言っていて、単純にミュートするとは違い、オフィスにいて座席を移動して声を聞こえなくようにするみたいな感覚があるといいと言っていたのが面白いなと思いました。

デジタルオフィスをうたっているとはいえ、現実のオフィスのメタファーを入れすぎるのもどうかという気もしますが、そういう観点で新機能が増えたりすると面白いだろうなぁと思います。

Remotty 一本でいこうと思うか?

個人的には思わないです。私達が使う Remotty ルームに情報共有のための記事や、プロジェクトの進捗・議事録、はたまた通知系まで入ってくると、せっかくの喫煙所やコーヒー自販機の前のような雑多な雰囲気が失われてしまうなと思うからです。

んー、なんかデジタルオフィスじゃなくて、デジタル喫煙所にしたいのか僕は。。

番外編: Remotty プチ活用

やることリスト

私がオフィスで仕事してた時は Redmine とか Pivotal Tracker とかでタスクやストーリーの管理もしてたのですが、立場的に並行してやることも多くて、小さいホワイトボードを机の横において、そこにタスクリストを書いたりしてました。

そういうのって、机の付近を通る人にも見えるので、ちょっとしたアピールになるんですよね。
「今忙しいからこれ以上仕事頼むな」「マネージャーさん、もう私はいっぱいいっぱいです」「誰かやってくれてもいいんだぜ」などなど。まあ、今となってはちゃんとチームでやれって話しでしかなくて、今は週次で計画とかもしてるので、そういうタスクオーバーフロー系はなくなったんですが、業務と並行してやりたい改善系とかの課外活動系が増えたりして、そういうのを Remotty に投稿してアピールしようという作戦をやってます。

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背景を娘の写真にしてるので、ちょっと目付近だけ映ってて怖いですが、、こんな感じで定期的に一日数回自動で投稿するようにしています。 「メール連携」と書かれているのですが、Slack の Incoming Web hook 的なものがメール連携機能用のトークンで実現できたので、それを使っています。(ビジネスプランとかにすると使えるのかな)
「メール連携」のトークンを使うとタイムラインには表示されず、自分のルームにだけ表示されるので、「オフィスで自分の机の近くに来る」と同じく「自分のルームを訪れた人」だけがそれが目に入るみたいな事ができます。

github.com

内容はすごい単純で、Trello の特定のリストの内容をそれっぽく整形して投稿してるだけです。Mac OSX の launchd の練習がてら書いただけなので、自分の Mac が上がってる時しか投稿されないのですが、まあ仕事してる時に投稿されればいいので良いかなと。

まあ、実際にはアピールというよりも自分のやりたいことリマインダー兼、進捗させるための推進用でしかない。

Remoppy (remotty bot)

github.com

ビジネスプラン用と同じなのか分からないですが、Remotty の Web API をベータテスターとして使わせていただく機会があり、たまに触っていたのですが、結局昨年は子育てに追われ(今も継続中ですが)何も形にできていませんしたが、最近娘が寝た後の少しの時間をちょこちょこ使いようやく動かせるものができてきました。

github.com

websocket を喋れることは上記のリポジトリで分かっていたので、Slack のボットフレームワークのメッセージのやり取り部分だけ書き換えればいいだろうと思い、お気に入りの Ruby 製の Slack bot framework の Slappy をクローンする形で作成しました。

README にあるサンプルを実行すると以下のような形で bot が反応します。(一応 bot らしく特別なアカウントを作ってそのトークンで運用していますが、自分のトークンを使っても動作するはず。ただ、逆に Slack のように bot 用の integration を追加とかはできないので、bot 用のアカウントを作った方が無難かもしれない。)

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まだ Slappy の機能の一部しか移行できていないので、徐々にやっていきたいところですが、Remotty 的に bot の運用を認めているか不明なので、もしかしたら駄目なのかもしれない。。

バーチャルオフィスにとって bot とは何なのか?

世の中だと、「パーソナルアシスタント」とか呼ばれる部類の bot もあるみたいですが、無理やりオフィスの文脈に当てはめると、「秘書」とか「執事(Jenkins 的な)」みたいな感じなのかなぁと想像します。

bot の便利さは開発面では Chatops 等でも実感できているところですが、そういう「なんとなく自動化できるって分かる」分野以外の、それこそ個人にフォーカスした部分ってあんまり考えたことないんですよね。Google の Allo をインストールしてみたものの、bot の機能は天気予報ぐらいしか使ってないし。。

まあ、いくらでも事例はあるんだろうけど、バーチャルデジタル喫煙所にいる bot ってどんなのか考えてみるのも面白いかもしれないなぁと。

最後に

地方拠点で働きだして 3 年が過ぎて良くも悪くも慣れてきたという部分はあります。

リモートが厳しいと感じていた緊張感はほぐれてきて、良い意味で肩の力は抜けてきましたが、逆に集中できていない時間があるなと気を引き締めなければいけないタイミングも出てきたりします。
一方で、拠点の環境は毎年良くなっており、本社の会議のストリーミング等の環境や、ネットワーク、VPN、ファイルの共有方法等は 3 年前に比べると劇的に改善しました。

チームとしては入退社もあるので多少のメンバーチェンジはありつつも、馴染みのチームになってきているなと感じます。心理的安全性みたいな点で言えば、私個人というよりもチーム全体としては、まだ全員が発言できるような状況にまではなっていないかなという気もします。こういうのはスピーカー越しに聞いている人間の方がよく分かるのかもしれません。
ただ、当初はスモールチームだったのが、人数も倍近くになっているので、これまで以上に Pull Request や共有用の資料作成には気を使い時間を使うようになってきたのは事実です。

一方で、対面でわざわざ話さなければいけない程困るという事もない規模は維持されているので、逆に出張の機会は相変わらず一定せず、先月に半年以上ぶりぐらいに業務都合での出張をしました。(社内の全社会議等の参加のために行くとかはありましたが)
ちょうど四半期の切り替え時期で振り返りや次の期の計画等をやれたので、そういうのは対面でなくてもいいけど、対面の方がやりやすい面があるなと再確認しました。

最近でもリモートワークの是非的な事はいろんな会社の事例も含め話されているように見えますが、個人的にはオフィスでみんなでワイガヤしながらやるのも楽しい思い出なので「リモートでないと駄目」とかいうつもりもありません。今でもたまにそっちをやってみたくなるときがあります。

ただ、仮に次に転職をするならば、自分がリモートをやるかどうかは別にしてリモートをきちんと認めて運用できている会社がいいなと思います。たぶんそれだけで認めている多様性が多いと思うのですよね。声が大きいだけではない、アピールが得意なだけではない、何かが苦手でも何かが得意である、何かそういうオフィスにいるだけだと評価や認知されにくいものが、リモートがある環境には少なからず存在している気がします。(もちろん評価に関しては、評価者がどういう人かってのに激しく左右はされますが。)

ただ、個人的にそう思うのでした。