会計の世界史を読んだ

半年近くかけて、ちまちま読んでいた気がする。病院の待ち時間は一人だし、他にやることも無いので読書が捗る。

会計関係の仕事とかは関係なく、初めて確定申告をやるとなったのがきっかけで手にとってみた。

確定申告自体は、一冊マニュアル本みたいのを買って、後はソフトウェアの言う通りにやっていけばなんとなく終わったのだけれど、「どうしてこう付ける必要があるの?」「たかが一人の個人事業主が、どうしてここまで細かく書かなければいけない?」など、もやもやしたものが残ったのだった。

全体を通して

会計エンターテインメントとなっている通り、各時代の芸術家たちと時代の説明がリンクされてえがかれていて、読みやすく楽しく読めた。

ヨーロッパから始まった会計の歴史が、イギリス、アメリカと渡っていき、現代にいたるという流れも面白かったし、そこで起こる栄枯盛衰もよくわかった。社名としては知っている「モルガン」さんや、「マッキンゼー」さんがどういう人物だったかなんて、自分からは調べもしなかったと思うのでそういう歴史が知れるのも楽しかった。

また、銀行や株式というのものが、会計の歴史のわりと序盤から登場しているというのも興味深かったが、当時の歴史的背景と合わせて理解すれば、なるほどなぁという感じになった。

後半になると、会計に加えて経営という話になってくるが、「ファイナンス」という耳にはするが、何のことかよくわからない単語のことも理解できてよかった。(もう、ファイナンシャルプランナーってなんだよ、とか言わない)

個人として

減価償却

一つ、確定申告をしていてよく分からなかった「減価償却」というもの。やっていることは分かるが、 個人事業主として それをする意味がいまいち分からなかった。(もちろん、所得に影響するので、必要性はわかりつつも、10 万とかそこらでどうして、という)

ここに関しては、もともとは鉄道時代の株主への配当を平準化するためというのはすごく納得がいった。確かに、めっちゃ設備投資した年に投資してくれた株主はその年は配当ほぼ無しで、翌年から投資した人がその設備投資から得られる利益の還元をフルに受けるってのは不公平。

まあ、個人の場合は、税収のためってのが大きいんだろうから、そのまま当てはまらないし、用語が同じだけで概念が別なのかもしれないけど、なんとなく理解が深まった。

株式の歴史

株式ってのは、現代の状況だけみると、頻繁に売り買いが行われて、その動きに一喜一憂するような、正直良くわからないというか、胡散臭いものに感じてしまうこともある。

ただ、歴史を追っていけば、もともとは株主は当然身内だし、それが仲間内になり、拡大するにつれてストレンジャーになっていっているよう。ただ、ストレンジャーが現れたぐらいの時は「その会社に期待して買う」という趣がほとんどだったようだし、頻繁な売り買いという風にも見えない。(実際はそういうのもあったのかもしれないけど)

本を読んでいると、ゴールドマン・サックスが、投資銀行として株を保有するようになるというのがあるが、その辺で、安く買って育て、数年後に売却なりするというのが出てきたように見える。

今だと、ファンドのような投資のプロ的な人たちがいて、その人達は預けられたお金を増やすため(だけ、というと語弊がありそうだけど)に活動しているのかなぁという気もする。

本を通して、投資自体は面白そうだと感じたけれど、一方で、「数字を読む」力や、そこから予測する力というのはいずれにしろ大事なんだなぁと思ったりした。

管理会計

きっちり決められた通りに過去の実績を付ける財務会計と、それとは別に経営や計画のために使う管理会計。そもそも、そういう分類があることすら知らなかった。

思い返してみると、前の職場ではソフトウェアの仕事をするにしても「資産」かそうでないかなどを勤務実績を付ける時にやらされていたのを思い出した。

運用しているアプリケーションの新規開発は資産、不具合改修は違う、新規開発用のミーティングは資産、定例ミーティングは違う、などなど。

正直、やっていて「なんでこんなことするんだ」と思っていたし、「必要だから」以上の説明はされなかったが、管理会計の視点から見れば、「資産」にかけた金額が経営計画を考える上で重要だし、ソフトウェアに関してもそれは例外じゃない、というかソフトウェアを売っていた企業だった以上それが全てだったんだろうと思う。

そして、本を読んで、そういうコストや資産の計算は、何十年も前から現在進行系で経営者が頭を悩ませている問題で、しかもどんどん時代が移り変わっていっているという状況だというのも知った。なんとなく、前職でそういう勤務実績の付け方が頻繁に変更されていたのも納得がいった。彼らも良い計画を(対外的にしろ、内部的にしろ)作るために必死だったんだろうなと。

最後に

ありきたりな感想だけど、会計というのを身近に感じられるようになれてよかった。勉強してみようかな、までは思わなかったけど、投資に関する情報ぐらいは読めるようになりたいなと思った。