予想どおりに不合理 3, 4 章を読んだ

こうやって、読書ログ的なものを書こうと思うと、前のページにパラパラと戻れる紙の本の利点を感じるなぁと思う一方で、電子書籍なら、ぱぱっとメモしたり、ラベルを貼ったりできるので、どっちもどっちかと思ったり。

読んで考えたこと

ゼロコストのコストに関して

Amazon は prime に入っているので配送料を考えることはほぼないが、楽天で買い物していると、つい「5000 円以上買えば送料無料」には引っかかる。たぶんこれは、prime の送料無料が一つアンカーになっていて、それと比較するため「送料は無料であって欲しい」というのに引っ張られているのかもしれない。

個人的には「これを買うと無料で何かが付いてくる」系にはあまり引っかからないようにしているつもりだが、「0 カロリー」「糖質ゼロ」には確かに釣られがちだ。。もちろん十分に低カロリー・低糖質であれば自分が食べたいもの、欲しい物を買うべきだとは分かっているが、たしかに引っ張られている気がする。(思考停止しているとも言える。)気をつけよう。

最後の割り勘の話での「誰かはワインを余分に頼んだ」とかそういうのを回避するために、誰かのおごりを順番にしていくというのは、たしかに自分の財布に余裕が出るようになってからだけど、友達の間でもするようになった気がする。

実験から分かる絶対的な価値と相対的な価値

高いチョコと安いチョコを、同じだけ値段を下げて、片方を無料にした場合に、顧客がどういう反応をするかってのは面白い実験だなと思った。

確かに値引き額は同じなので、高いチョコもお得に買えるようになっているはずなのに、無料のチョコを手にとってしまう。これは、もちろん顧客には「最初から無料」に見えるからってのもあるんだろうけど、ここで「そのものの価値」ってのが分かっていると景色が違って見えるんだろうなとも思う。

一方で、あらゆるものの値段を常に把握している訳にもいかないし、常にわかりやすく隣にならんでいることはないぐらい物が溢れている社会なので、それはそれで難しいなと思った。

AR でパッとかざすだけで、それの通常の値段とかが分かると、「本当にそれが買いか?」が分かるかなと思ったけど、単に安いものを買うだけの動機づけになりそうな気もする。

社会規範と市場規範に関して

この章はめっちゃ面白かった。

わかりやすく「プレゼントか現金か」みたいに説明してくれているが、自分の行動を振り返ってもいろいろと気づくことや反省点も多い。

例えば、地方に住んでいると車移動が多いので「誰かが車を出す」というのはよくあることで、でかい車を持っているとその対象になることも多くなる。当然運転手もその持ち主になる。(たいていは友人まで対象にした保険には入っていないだろう)

なんとなく「いつもありがとう」という意味で帰り際に「夜食でも買って」とガソリン代的に渡してしまうことがあるのだが、これは良い行動だったのか?たぶん直感的に「現金はな」みたいなことが分かっていたのか、食事代を多めにだすことにしたり等で済ませていることもあったが、直接渡してしまうこともあった。この行動によって、友人が車を出す行為には市場規範が適用されてしまったのかもしれない。

また、お土産やライブのグッズなんかをよくくれる友人に、「グッズ代は払うよ!」と反射的に言ってしまうこともあるのだが、これも悪手だったなと。。そういう意味で、最近は友人も頑なに受け取らないので「次のご飯おごらせて」になっていったのは友人のおかげが大きいがいい流れかなと思う。

ただ、書籍内にも出てくるが、「嬉しいか分からないプレゼントやお返しより、現金の方がいいのでは?」はどうしても選択肢として出てきてしまう。特に、年齢を重ねて自由にできるお金も増えてくると、両親に対しても「現金で」という考えが出てきたりするが、「それじゃないな」と改めて思ったりした。

罰金は市場規範

託児所の遅刻を罰金にしたら、逆に遅刻が増えたというのはすごく興味深い内容だった。

市場規範が適用された時点で、金銭で交換可能なものになり、「先生に悪いな」という気持ちを消し去ってしまう。

こういうのは、罰金ではなく、単なる罰に変えても同じなんだろうか。

企業と従業員

「やりがい搾取」的なものが話題になって久しいが、なんとなく「企業と従業員」はドライな仕事と報酬だけの関係が良いと思うようになっていた。

一方で、書籍内で書かれている、そういう市場規範だけの関係だと生産性に悪い影響を及ぼすのではないかというのは多少納得できる部分もあった。

もちろん、就業後や休日まで仕事のことを考えるのが良いとは思わないが、一方であまりにドライな関係だと、仕事に熱中できる感覚もまた失われる。

ボーナスか福利厚生かという点に関しては、現代ではいろいろ議論はあると思っていて、リモートワーカーや家庭を持ちながら仕事をする人が増えたことを考えると、福利厚生によってはそれを享受できる人とできない人で大きな差が出てしまう。(実体験としてそう思う)

では、ボーナスがいいかというと、市場規範が適用されてしまう上に、評価の難しい仕事が多いため、そのボーナスが適切か、公平かという余計な議論を呼びかねない。

業務委託としての働き方に移行してまず思ったのは、時間と報酬という分かりやすい体系になったのはいいが、企業に関しては何の関与もできないというものだった。もちろん、それは契約内容にもよるとは思うが、結局中の人からも金銭で契約しているだけの人という見え方になってしまうし、自分の発言もどうしても企業の実態を捉えたものではなくなってしまうものになっているのを感じる。

多様な働き方ができる時代になったので、市場規範か社会規範かというのも意識しつつ、いろいろ試してみたいものである。